「あー・・・眠い」
「あぁ」 「眠い」 「そうだな」 「うん」 「・・・・・」 「おい、亘、寝るなよ」 「・・・無理だよ・・・」 「・・・別に俺はいいんだぞ、お前が寝たって。お前が今さら寝て5時入りのバイトに遅刻して早々にクビになったって、俺にはなんの関係もないからな」 「・・・・」 間。 「ほれ」 と、テーブルにふたつ並んでおいてあるマグカップの一つをほんの少しすべらせる美鶴。 「今入れなおしたから」 「ありがと」 間。 「あーあ、つっかれた」 「よく眠くならないよ」 「眠いに決まってるだろ。やらなきゃいけないからやってるだけだ」 「あー・・・・(またうつらうつら)」 「・・・・亘」 「はっ!・・・・・僕、コンビニ行ってくる」 「カロリーメイト頼む」 「チョコ?」 「チーズ」 亘、外出。 美鶴がレポートにペンを滑らせる音が響く。 と、携帯が鳴る。 「どした」 「・・・今TSUTAYAにいるんだけどさ」 「カロリーメイトはどうしたんだよ」 「ちゃんと買うよ!そうじゃなくて・・・そうじゃなくて」 変なところでぷつっと切れる。 「・・・あいつまた充電し忘れたな」 人が少ない道路を歩く美鶴。 コンビニの前を通り過ぎ、その隣にあるTSUTAYAへ向かう。 コンビニの中を確認する美鶴。亘はいない。 「あれ、美鶴」 TSUTAYAから出てきた亘。 「カロリーメイト」 「ごめん、まだ」 「・・・」 「あ、さっきごめん、電池切れちゃって」 「なんだよあれ」 「いや、それがね。こっちこっち」 ツタヤの中に入る亘。 マイペースにその後を歩く美鶴。 ツタヤの中は、人工的な人間の熱気が満ちている。(にぎやかな音楽、流れるDVD) 人はまばらで、リアルな人間の熱気はあまり感じない。 「ほら」 一角のコーナーを指差す亘。 とある新発売のDVDが大量においてあり、CMなども流れている。 「・・・あぁ」 不思議な感覚。 この一角は、ほとんどたった今作られたものだろう。近くにダンボールがまだ片付けずに置いてある。 まだ誰の目にも、手にも、けがされていないその一角。 ただのDVDの陳列棚に、不覚にも彼らは一種の神々しさを感じていた。 あとたった数時間後には、消え去る、処女のごとき純粋さ、美しさ。 その一瞬に立ち会えたことに対する不思議な感情を、亘も美鶴も感じていた。 不思議と、その陳列棚の品をレジへ持っていくことはできなかった。 恐らく一生そうすることはないだろう。 彼らにとってこの作品は、非常に魅力的であると同時に、自分の中の触れてはならないものに触れる、恐怖的なものだった。 それをいつか、克服することができるのだろうか。 なんの迷いも無く、この作品を目にし、微笑むことが、いつかできるのだろうか。 もしくは、今持っているこの感情を全て忘れて、ただ無感情にこの作品を見る日がいつか来るのだろうか。 彼らにはわからなかった。 今の彼らには、まだ。 「・・・もうだめだよ、限界」 「あと30分」 「寝たい・・・10分だけ寝かせて」 「やめろ」 「10分・・・」 「そういうのが一番たちが悪いんだ。絶対に起きない。断言する」 「(むくりと起き上がり)・・・もう行こう」 「あぁ、それが今のお前に一番相応しい選択肢だろうな」 「僕は眠らない。眠らずに、バイトに行く」 「俺は寝る」 「うん・・・ってええ!?」 「レポート終わった」 「あぁ・・・終わったんだ」 「おやすみ」 「うん・・・おやすみ」 「・・・・」 「・・・あれ、美鶴、学校・・・・9時からとかじゃなかったっけ」 「・・・・」 「今寝たらまずくない?」 「・・・10分だけ待っててくれ、10分たったら起こせ」 「え、美鶴?」 「(寝ている)」 「さっきの、たちが悪いとかなんとかって・・・え。おい、美鶴?」 「(寝ている)」 「いや、10分とかってそんな・・・おい、寝るなよ、僕バイト行くよ?」 「(寝ている)」 「・・・・・(こいつっ・・・!!!)」 とりあえず10分待とうと留まった亘だが、そのせいで亘も寝てしまい、バイトに遅刻。 美鶴も寝過ごし、授業に遅刻しレポートを提出しそこねた。 ということで、ブレイブDVD発売おめでとぉーーー!!!
by yuzukkoaiko
| 2006-11-23 04:31
| ブレイブストーリー
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